黒田 幹雄– Author –
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正念と、将来を考えることについて
黒田 幹雄「正念」という言葉に触れて、少し考えた。 『葉隠』の中で「正念」とは、「今」に全身全霊を注ぎ、気を抜かずに生きることを意味している。雑念に心を奪われず、目の前のことにまっすぐ向き合う。心が澄み、意志が定まり、そこに迷いはない。そんな状... -
煙となりて
黒田 幹雄伝えたい言葉がひとつ、またひとつ 胸の奥で静かに眠る それを声にはしない風にほどける夢のようにただ、生き様の中に忍ばせておく かつての君にもう会うことはないとしてもこの道の先で僕がいなくなったあと どこかの空に昇る 白い煙がほんの一瞬君のま... -
あの夜のまま
黒田 幹雄ふとした瞬間に、過去の気持ちが思いがけずよみがえることがあります。もう忘れたと思っていたのに、胸の奥ではずっと静かに息づいていた想い。それは、いつか誰かと過ごした夜の景色かもしれません。 ---(詩)--- 思い出さなくなって どれくらい経った... -
夜のさざなみ
黒田 幹雄声にはしない風にも漏らさないけれど 確かに揺れている 暮れかけた空の下ひとすじ 光の道が海の奥からこちらを見ていた 誰にも告げぬまま心の奥に灯されたささやかな焚き火のように 消えたふりをしてじっと 息をひそめてやがて 灰の奥でまた 赤く 熱... -
一生懸命に生きるということ
黒田 幹雄親からもらった、たった一度きりの人生。その限られた時間をどう生きるか――。この問いは、誰にとっても避けられないものでありながら、答えの出ないまま日々に埋もれてしまいがちだ。 最近、三島由紀夫の『葉隠入門』を読み進める中で、私は「死を覚悟して... -
今日の風
黒田 幹雄なぜだろう今日の風は どこか懐かしくて忘れたはずの名前を 胸の奥で呼ぶようだった 誰にも届かない声それでも空へ放つと少しだけ 心が軽くなる気がした -
遥かなるときへ
黒田 幹雄ひとの心には言葉にならない風景があるひかりと影のあいだに揺れる名もなき日々の面影 時は流れ幾度も空は色を変え忘れたはずのものがふと 胸に触れる夜がある いま 静かに綴る声なき想いの残響それは誰かに届くためではなくただ ここに在った証として ... -
遥かなるときへ目を閉じる
黒田 幹雄雨はほとんどやんで雲の下で 街は濡れたまま静かに息をひそめているそんな 灰色の光がさすころふと 遠くの記憶が呼びかけもせずに 胸の内に降りてきた 誰かの笑顔のぬくもりに似たかすかな光の中に浮かぶ輪郭どこかで見た気がする風景の切れ端曖昧なま... -
雨の終わり、連休のあと
黒田 幹雄静かな雨がカーテン越しに世界を淡く塗り替える ざわめきも歓声ももう遠く、たたまれたレジャーシートのように この連休僕は旅に出なかった万博にも、渋滞にも、計画にも背を向けてただ、机と本と、少しの仕事のなかに静けさを見つけていた ページをめくる...
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