ときどき、昔の知り合いのことを思い出す夜がある。
ふだんの生活の中では思い出すこともなくなった名前が、
ふとした拍子に、波のように押し寄せてくることがある。
懐かしい土地のことを考えたり、
若いころによく歩いた道を思い出したりすると、
あのとき一緒にいた誰かの顔や声まで、
細かいところまで立ち上がってくる。
そんな夜には、
つい好奇心に負けて、
昔の友人やお世話になった方の名前を
インターネットで検索してしまうことがある。
今はもう、それほど珍しい行為でもないのかもしれない。
画面の向こう側に映るのは、
すっかり年月を重ねた「いま」の姿だ。
肩書きが増えていたり、
住んでいる場所が変わっていたり、
まったく別の世界で生きていたりする。
それでも、目元や笑い方のどこかに、
昔と変わらない面影が残っていることがある。
自分の人生は自分なりに歩いてきたつもりだが、
時折こうして、かつて同じ時間を過ごした人たちのことを思い出す。
あの頃の自分の選択が、相手にとってどう映っていたのか、
いまさら確かめる術もない。
それでも、心のどこかで願っている。
あの時代の記憶が、
その人にとっても、
少しでも穏やかなものとして残っていてくれたらいい、と。
名前を検索してみたところで、
こちらから何かをするわけではない。
ただ、「生きているらしい」と知るだけで
少し安心することもある。
過去に深く踏み込むつもりはない。
追いかけるわけでも、
何かをやり直したいわけでもない。
ただ、自分が生きてきた道のどこかに、
確かに一緒に歩いた時間があったのだと、
そう確認したくなる夜が、ときどきある。
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