日本はなぜ「ハブ」になるべきなのか

――東アジアの覇権構造と日本の現実的な生存戦略――

今日は、少し大きな話を書いてみようと思う。
経済の話から始まって、人口、国家経営、そして覇権国家と地政学の話まで、
最近あれこれ考えていたことが、一本の線でつながってきた。

日本はこれからどういう国として生きていくのか。
成長するとか、衰退するとか、そういう言葉の前に、
どの位置に立つ国なのかを、もう一度整理しておきたかった。

答えを出すつもりはない。
ただ、現実を直視したうえで、
日本にとって比較的筋が通っていそうな立ち位置について、
いまの時点で考えていることを書き残しておく。

そんな文章です。


目次

覇権国家と地理の現実

歴史を振り返れば明らかなように、
覇権国家は地理的に近い国に対して強い影響力を行使しようとする。

それは必ずしも侵略という形を取らない。
経済、外交、情報、軍事など、あらゆる手段を通じて「影響圏」を形成する。

日本にとって、東アジアで最も大きな現実は、
中国という近隣の覇権国家の存在だ。

これは好悪の問題ではなく、
地理が生む必然である。


日本の基本戦略──「遠くの覇権」と組む

日本が戦後一貫して取ってきた戦略は、実はとても単純だ。

地理的に近い覇権国家から距離を取り、
遠くの覇権国家と結びつく

その相手が、米国である。

太平洋を隔てた米国は、日本にとって直接的な領土的脅威になりにくい。
一方で米国にとって日本は、東アジアに影響力を行使するための重要な拠点となる。

利害が一致するからこそ、同盟は安定する。


次の段階──日本が「結び目」になる

しかし、これからの日本に求められる役割は、
単なる同盟国にとどまらない。

東アジアには、中国の影響力に晒されながらも、
内心では距離を取りたいと考えている国々が存在する。

台湾、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどがその代表例だ。

これらの国々が、日本との関係を通じて
間接的に米国の安全保障ネットワークに接続される

そのような構造を作ることができれば、

・周辺国にとっては、中国一極化への保険になる
・米国にとっては、地域戦略が安定する
・日本にとっては、不可欠な存在価値が生まれる

日本は「前線」ではなく、
調整役・ハブとして機能できる。


英国との関係が重要な理由

この構想において、英国との関係も軽視できない。

英国は伝統的な海洋国家であり、
大陸覇権の拡張を外縁から抑える戦略を得意としてきた国だ。

近年、英国がアジアへの関与を強めているのは偶然ではない。

日米英という枠組みは、

・海洋国家同士の戦略的一貫性
・中国に対する過度な刺激を避けた抑止
・インド太平洋全体の安定

という点で、日本にとって非常に相性が良い。


ハブになるために必要な国内改革

もっとも、外で役割を果たすには、内側が伴っていなければならない。

日本がハブになるためには、少なくとも次の条件が必要だ。

・任せられるだけの防衛力
・外せない技術と供給網を持つ経済安全保障
・危機時に迷わず動ける意思決定体制
・地域をつなぐ人材と言語、情報の力
・エネルギーと人口構造という長期的な持久力

これらが揃って初めて、日本は
「通過点」ではなく「要」になる。


国家経営という重い現実

国家経営とは、正解を選ぶ作業ではない。

常に不完全な選択肢の中から、
どの不完全さを引き受けるかを決め続ける作業だ。

日本が目指すべきは、覇権国家になることではない。
しかし、覇権国家同士の力がぶつかる世界の中で、
無視できない存在であり続けることはできる。

そのための一つの答えが、
「東アジアのハブとしての日本」
という立ち位置なのだと思う。

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