ふとした瞬間に、過去の気持ちが思いがけずよみがえることがあります。
もう忘れたと思っていたのに、胸の奥ではずっと静かに息づいていた想い。
それは、いつか誰かと過ごした夜の景色かもしれません。
—(詩)—
思い出さなくなって どれくらい経っただろう
風も 光も 別の道を選んでいたのに
このあいだ ふと 夢のなかで
あの夜に 戻っていた
冷たい水のなかを
ふたりで歩いていた
痛みはあったけれど
未来があたためてくれると 信じていた
季節は何度も巡って
ふれていた温もりも 耳に残る声も
時間に溶けて やわらかく消えていたはずだったのに
胸の奥に ひとすじ
消えない水音が残っていた
ずっと 気づかないふりをしていた
わたしは まだ あの夜のまま
時間の流れとともに、すべてが過去になるわけではないのかもしれません。
ときどき、心の奥からひとつの夜が浮かび上がってくる――
そんな経験、ありませんか。
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