黒田 幹雄– Author –
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遥かなるときへ
黒田 幹雄ひとの心には言葉にならない風景があるひかりと影のあいだに揺れる名もなき日々の面影 時は流れ幾度も空は色を変え忘れたはずのものがふと 胸に触れる夜がある いま 静かに綴る声なき想いの残響それは誰かに届くためではなくただ ここに在った証として ... -
遥かなるときへ目を閉じる
黒田 幹雄雨はほとんどやんで雲の下で 街は濡れたまま静かに息をひそめているそんな 灰色の光がさすころふと 遠くの記憶が呼びかけもせずに 胸の内に降りてきた 誰かの笑顔のぬくもりに似たかすかな光の中に浮かぶ輪郭どこかで見た気がする風景の切れ端曖昧なま... -
雨の終わり、連休のあと
黒田 幹雄静かな雨がカーテン越しに世界を淡く塗り替える ざわめきも歓声ももう遠く、たたまれたレジャーシートのように この連休僕は旅に出なかった万博にも、渋滞にも、計画にも背を向けてただ、机と本と、少しの仕事のなかに静けさを見つけていた ページをめくる...
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